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PM 27春 午後Ⅰ 問1

問題

生産管理システムを導入するプロジェクトの,ステークホルダマネジメントに関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

 H社は製薬企業である。米国市場へ進出するために,米国の大手製薬企業X社と提携し,その傘下に入った。
 米国市場へ製品を輸出するためには,米国の医薬品業界の基準に適合した生産管理システムを導入する必要がある。そのため,X社から,X社グループ標準の生産管理システム(以下,X社標準システムという)を導入することを求められた。H社の経営陣は,X社標準システムの導入を決定した。
 X社は,H社がX社標準システムを導入するに当たって,X社標準システムに詳しい米国人コンサルタントのY氏をアドバイザとして派遣することを約束したが,システム導入はあくまでもH社が中心となって進めることが前提となっている。X社は,H社が守るべき条件として,次の項目を指定している。

  • X社標準システムの導入作業は,X社が提示するX社標準システム導入手順のテンプレート(以下,テンプレートという)に沿って実施し,進捗状況について定期的にX社に報告すること。
  • X社標準システムの稼働開始の前提として,H社が,X社標準システムを利用して基準を満たす製造プロセス(以下,X社標準業務プロセスという)を実行できるかどうかを,導入作業終了後,稼働開始までにX社の監査員が監査し,指摘事項があれば対応すること。

 X社標準システムでは,製造の記録及び承認の履歴を,電子的に追跡できることが前提となっている。H社のこれまでのシステム(以下,現システムという)は,生産計画の策定から実施,結果の収集などを行うことはできるが,紙での記録が中心で,作業工程の履歴を紙に記録し,管理者が確認をしたという記録をシステムに入力する手順になっている。したがって,X社標準システムの導入においては,システムの導入と並行して,従来のH社の業務手順をX社標準業務プロセスに沿って見直す必要がある。
 H社は,X社標準業務プロセス及びX社標準システムの導入の統括責任者として製造部門のI部長を任命し,その配下に業務見直しのための委員会(以下,見直し委員会という)とシステム導入のためのプロジェクトを設置した。また,見直し委員会の委員長はI部長が兼務し,現システムの業務の主担当者である製造部門のJ課長がリーダとして参加する。見直し委員会のメンバは,X社標準システムの利用者となるH社の製造プロセスに関わる部門の実務担当者(以下,H社利用部門という)で構成される。プロジェクトのプロジェクトマネージャ(PM)は,システム部のK氏が担当し,見直し委員会にもメンバとして参加する。
 H社のシステム部は,システムの開発・運用の企画・計画を主な業務とし,現システムを含む実際のシステム開発・運用業務の多くは情報子会社のT社に委託している。K氏は,X社標準システム稼働後の運用業務についてもT社に担当してもらう方針で,導入作業への協力を依頼した。T社は,自社が開発に関わっていないX社標準システムの導入作業及び運用業務に協力することに抵抗感をもっていたが,K氏に強く依頼されて,最終的には応じることになった。今回のプロジェクトとステークホルダの関係を図1に示す。

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IPA公開情報

出題趣旨

 プロジェクトマネージャ(PM)が,プロジェクトに関わるステークホルダを認識し,適切にマネジメントすることは,プロジェクトを成功裏に進める上で非常に重要である。
 本問では,海外の提携先企業からのシステム導入を題材に,PMとしてステークホルダの現在の状況を認識し,望ましい状況に変えるための対策を立案する実践的な能力を問う。

採点講評

 問1では,ステークホルダマネジメントについて出題した。設問1⑵,設問2については正答率が高かったが,設問1⑴,設問3⑶及び⑸については正答率が低かった。
 設問1⑴では,現システムに代えて新たなシステムを導入する際に,業務継続性を確保するための重要な作業について出題したが,正答率は低かった。移行作業をWBS項目として計画することが重要であることを理解してほしい。
 設問3では,ステークホルダを“関与度”,及び“影響度”という観点から分析し,その要求への対策を考える洞察力と課題解決力を問うた。
 設問3⑶では,最終的に利用する立場のステークホルダである利用部門に対しては,事前に正確に情報を伝え,期待値をコントロールしつつ,関与度をどのように高めてプロジェクトに参加させるかが課題となることを理解して解答してほしかった。
 設問3⑸では,アドバイザの立場にいるステークホルダをプロジェクトに巻き込み,関与度及び影響度を高める対策についての実践力を問うたが,正答率は低かった。ステークホルダに適切な役割を割り当てることで,プロジェクト体制が機能するように計画していくことが重要であることを理解してほしい。